今月12月16日コミックニュータイプにて連載再開!そして、12月26日にはコミック最新刊として第9巻が発売予定のむらかわみちお先生の「宇宙戦艦ヤマト2199」ですが、今回の連載再開までおよそ5年の歳月が経ちました。
2017年(第52話)の連載休載時には様々な噂がありましたが、連載再開を待ちわびていたコミカライズ版「宇宙戦艦ヤマト2199」ファンの間ではネット上で歓喜の声が上がりました。
そもそもコミック第9巻の脱稿は2017年にされていたようですので、そのまま作品がお蔵入りする可能性もあったことを思うと、今回の連載再開&最新刊第9巻(第46話〜)発売は本当に嬉しいニュースですね。
連載当時から大変人気のあったコミカライズ「宇宙戦艦ヤマト2199」がむらかみ先生の体調不良やコンプライアンス上の問題が原因が無いにも関わらず、休載になってしまったのはとても不思議でした。
そこで今回はむらかわ先生のブログ(楽只堂)の当時の記事を拝読しながら休載になるまでの経緯を振り返ってみたいと思います。
『ここまでが8巻+α』(2016年5月27日)
ブログの記事では、現在(2022年11月末時点)でのコミック最新刊8巻までの脱稿が完了し、ヤマト艦内の反乱編を楽しんで欲しいと述べられています。また、黄色信号、赤信号だった体調も改善されているコメントもあり、体調の心配は無さそうです。
『今日は一日「ガルパン」三昧』(2016年6月24日)
今月も無事に脱稿したと述べられており、連載時の原稿画像も紹介されています。
『シン・ゴジラは凄い』(2016年7月31日)
今回の記事中に『原稿はずっと描いているのだけれど、7月更新は諸事情で見送り。世の中なかなか難しい。』と述べられ、2016年7月の時点で何か諸問題が発生したと思われます。
『自分の中の火』(2016年9月28日)
冒頭にて『体調は悪くないけれど色々と事情が錯綜していて漫画の掲載は止まっている。だけど原稿は描いてるし、脱稿したものは編集部に預かってもらっている。』と述べられ、『角川編集部も連載の再開に向けて親身になってくれているので、とても心強い。』ともあるように、色々な事情が錯綜しているもののカドカワ側の問題では無いことが窺われます。原稿を描き続けるも、無収入という状況も述べられています。
『再開』(2016年11月12日)
今回のブログ記事で掲載の再開が報告されました。『角川編集部が長い交渉に力を尽くしてくれたことへ深く感謝する』とありますが、角川編集部の交渉先は明らかにされていません。また、休載中のネットの言葉にも心を痛めていたようです。
『「どうなるのかな」だけではだめだ』(2017年3月14日)
『9巻の原稿はもう年初には脱稿している。』とあることより、脱稿から今回の最新刊9巻発売まで6年近くかかってしまったことがわかります。
また、『コミカライズというプロジェクトとの中で、組織間の交渉が主体になってしまって、自分の言葉が出る機会は限られるけれど、座して待つだけではなく、できることを努力していけたらいいなと思っている。』ということで『組織』というワードが登場しています。
『まずはお礼から』(2017年5月2日)
今回の記事では掲載中断について、かなり重要な話が述べられています。
連載のあり方について話し合いの最中に、自分が表立って発言をしてしまうと、物事がややこしくなり、交渉にも支障をきたすので、角川からは発言を控えるようにと言われていたこと。
角川書店の担当編集さんが異動になってしまったが、ヤマトという作品の今後を見据えて、変らず親身に対応をしてくれていること。
「宇宙戦艦ヤマト2202」の仕事で会うことも多い羽原監督と福井晴敏さんは漫画の連載へ理解と応援をしてくれていること。
ネットでは出渕監督とケンカしているのでは?とかコミックの販売部数が落ち込んでいるのでは?ということが連載停滞の懸念材料として言われていたようですが、それは全くの事実誤認ということ。
角川は掲載が1年近くままならない状況でも、大切にしてくれ、漫画の掲載もしたいし、コミックスも出したがっているということ。
等が述べられ、出渕氏との不仲、カドカワからの打ち切りという、ネット上等で言われていた幾つかの噂は打ち消されました。
そして、『僕の漫画や新作アニメ2202について、どのような動きになっていくかは、大詰めの調整に入っていますので、近いうちに公式な形で諸々の方向性を示せると思っています。それまでお待ち下さい。』と重要なコメントもされています。
『色々と公開』(2017年6月21日)
『24日は僕のコミカライズの2199が久々に更新になる。1月には脱稿していたものだけど、それを10頁以上にわたり修正と描き直しをすることでようやく掲載許可が出た。コミックスにまとまるときは、元の内容に戻してもらう約束にはなっている。
そこについては角川が尽力をしてくれたし、異動になってしまった元の担当編集の助言もあってのことで、感謝をしている。』と述べられています。
「まとめ」で詳細を後述しますが、修正部分が今回の最新刊第9巻でちゃんと元の内容に戻っているようですので楽しみですね。
『自分の航路』(2017年9月21日)
またしても『ヤマト2199の連載も諸般の事情でしばらくお休みとなり、』というコメントが述べられ、また、むらかわ先生が「宇宙戦艦ヤマト2202」で担当していたモニター設定のデザインが自分のデザインしたものと全く違ったものになっていたため『総監督には演出意図と合わないのなら、再デザインするからせめて連絡を欲しいと告げてしまった。』とあります。総監督とは羽原監督のことと思われます。「宇宙戦艦ヤマト2202」製作側へのむらかわ先生の憤りが感じられます。
ブログ記事の最後には『ヤマトマト2199のコミック再開までの間、自分は何をするのか。まずは続きの10巻のシナリオを早ければ10月には全部書いてしまうこと。そして、どこかで漫画の仕事が出来るように、いくつかの出版社とコンタクトを持っているところ。』と述べられ、ヤマト2199の掲載再開へ向けてまだ用意はするものの、他の作品を描き始める覚悟が垣間見れます。
『Instagramを始めてみた』(2017年9月26日)
前回のブログ記事から5日での更新。『基本的な目論見は宇宙戦艦ヤマト2199、2202の応援で、まぁ角川から僕の画集が出ることはないだろうし、営利ではないし、絵の全体を見せるのではなく、部分だけだし、関係各位もあまりお怒りにはならないだろうとのことで。』とあるように宇宙戦艦ヤマト2199、2202の応援の目的でInstagramを開始したそうです。
(補足)
2022年11月下旬よりこちらのむらかわみちお先生のインスタのアカウントが突然停止されてしまったようです。『誰かが違反アカウントだと定期で通報してるのかな?』と先生も不思議に思っているようです。Instagram側へ復活の申請をしているようですが、アカウントの復活はまだ未定のようです。
(補足の補足)
インスタのアカウント復活しました。
また、ブログ記事中の追記としてカドカワと2199製作委員会との関係は良好と述べられています。2202がスタートしてから諸事情が発生したことが窺われます。
『新春のご挨拶』(2018年1月5日)
年が明けて2018年最初のブログ記事にてガルパンのスピンオフである『ガールズ&パンツァー樅の木と鉄の羽の魔女』の新連載予告と経緯が述べられています。ここではあくまでもヤマト2199の再開までの新連載ということが念頭にあることが窺われます。
そして、このブログ記事以降、『ガールズ&パンツァー樅の木と鉄の羽の魔女』、『ラジオスィート宇宙戦艦ヤマト』関連の話題が多くなり、ブログの更新頻度も少なくなってしまい(丸々1年ぶりの更新の時期もありました笑)、「宇宙戦艦ヤマト2199」の再開については沈黙状態でした。しかし、…
『2199再開します!』(2022年11月3日)
本年7月のブログ更新から約3ヶ月ぶりの更新は2199再開のビッグニュースでした!
『日程的には、まず12月16日に連載の再開。第53話になります。七色星団編です。お休みしていた間に、最終回までのプロットはできておりますので、それを軸に据えて、アニメが1話分の時間や演出にとらわれるのとは違う、漫画らしい構成で柔軟にお話を組んでいこうと思っています。』と述べられていますので、本年にこれからの連載が楽しみですね。
まとめ
以上がむらかわ先生のブログの中で「宇宙戦艦ヤマト2199」休載〜再開について書かれていた記事の数々です。
時系列に考察すると2016年の7月に諸事情が発生したわけですが、これは間違い無く2016年3月31日に正式発表された『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』(2016年9月5日制作発表会開催)が影響していたことが窺われます。
角川編集が交渉していた組織というのは『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』側の組織とすると、交渉の原因となっていたことは何だったのでしょうか?
それは、むらかわ先生のコミカライズの内容(『森雪がイスカンダル人ユリーシャの遺伝情報を持ったクローン』という設定)だったと言われています。(第52話掲載時の休載のお知らせ)
森雪のクローン設定は元々、出渕裕氏が「宇宙戦艦ヤマト2199」を製作するにあたり、生前の西崎義展氏からダメ出しをされた初期プロットの三箇所のひとつと言われています。
↓「宇宙戦艦ヤマトをつくった男」には復活編やリメイク製作の経緯も書かれていますが、Amazon試し読み部分の文庫版まえがきでは出渕氏のインタビューが記述されていますので試し読み部分だけでも一読することをお勧めします。
コミカライズ「宇宙戦艦ヤマト2199」連載開始の際、ストーリーについては、むらかわ先生がどのようにアレンジしてもよいというお墨付きだったはずでしたが、連載中に『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』が新たに制作されることとなり、連載開始時の2199の主要スタッフである出渕監督等が変更されたこともあり、横槍が入ったと推測されます。
『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』の総監督である羽原信義氏とシリーズ構成・脚本の福井晴敏氏は、むらかわ先生のコミカライズを応援してくれていることがブログには書かれています。(むらかわ先生は羽原監督の最新アニメ『境界戦機』で絵コンテも担当しています) また、むらかわ先生はノベライズ『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』の挿絵や劇中メーター類のデザインを担当しており、2202の最重要スタッフから避けられているようには見えません。
真相は不明ですが、噂のひとつにコミカライズの内容に横槍を入れたのは2202のある主要スタッフだったと言われています。その噂される人物は(羽原氏、福井氏以外となると…)、2202の主要スタッフでありながら、続編である「宇宙戦艦ヤマト2205新たなる旅立ち」、最新作「ヤマトよ永遠にREBEL3199」のスタッフには加わっていないようです。
しかし、2199、2202両作でキャラクターデザイン等を担当した結城信輝氏によると、言える範囲、知る限りでは圧力のようなものはあったが、噂の人物からとは聞いていないようです。(ただ、噂の人物の過去のTwitter発言などを見ると、当時の製作陣の中での影響力はとても大きかったと思われます…)
(ちなみに、2205以降、噂の人物はヤマトに関わっていませんが、逆に、むらかわ先生は現在でも公式ヤマトファンクラブのヤマトクルーの新規会員入会特典用のイラストを描いていたり、ヤマト最新作のREBEL3199のお仕事にも参加しています。)
2199、2202の主要スタッフであった結城氏のこのTwitterでのコメントの信憑性は非常に高いと思われます。つまり、世間で噂される人物からの圧力ではなく、圧力は『いちクリエイター』よりも上位の存在からだったと窺えるのです。
そこで、2199と2202の制作スタッフを見比べると、2202では2199にはなかった「製作総指揮」というポジションが「企画」に代わって存在していることがわかります。(ヤマト旧作シリーズでは製作総指揮・西崎義展氏とクレジットされていました) また、この製作総指揮のポジションの人物が2199の続編作の構成を福井晴敏氏にオファーしたことが過去のインタビューでは紹介されています。
2199の総監督であった出渕氏が続編、準備をしていたことは、2018年、2019年に前述の結城氏や噂の人物のTwitterのコメントでも確認が出来ます。それにも関わらず、「いちクリエイター」である出渕氏が続編から降板となったのは、2199では企画として参加していた人物が2202では「クリエイター」以上の大きな存在となり、出渕氏の旧作オタク気質を嫌って梯子を外したのではないでしょうか。
前述の通り、故西崎義展氏は生前の出渕氏との打ち合わせで森雪クローン設定を許可していませんでした。そのため西崎義展氏が亡くなった『後』に製作された2199本編中では「匂わせ」はあるものの言及はされることはありませんでした。しかし、むらかわみちお先生のコミカライズでは森雪クローン設定を採用したことにより、法的にも西崎義展氏の意志を継ぐ製作総指揮の人物の圧力としてコミカライズの連載のストップがかかったと思われるのです。
リメイク作最新作「ヤマトよ永遠にREBEL3199」の制作スタッフはいまだ一部のみの発表しかされていません。もしかしたら製作総指揮というポジションが無くなっている可能性もあります。そうであるならば、上記のような「宇宙戦艦ヤマト2202」「宇宙戦艦ヤマト2205」製作時にあった『圧力のようなもの』が無くなり、また、むらかわ先生が角川で連載していた『ガールズ&パンツァー樅の木と鉄の羽の魔女』の執筆も終わっていたことにより、今回ついにヤマト2199の連載再開となったのかもしれません。
すでに最終回までのプロットは完成しているようですので、是非ともこのまま連載を続けて我々ファンを楽しませて欲しいですね。
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